設備調査診断

マンションにおける給排水設備の大規模な修繕、改修等の工事は、概ね経年20年〜30年で行われることが多い。
その計画に先立ち、建築設備調査診断を行う際、その旨として大きく二つに分けられる。一つは、長期修繕計画立案のデータ収集(劣化状況の把握と予測対応年数)の為に行われることと、もう一つは、目前に迫った修繕や改修等の工事の計画(劣化状況に応じた工事範囲の考察や仕様等の決定)の為に行われることです。
一方、電気設備の診断は、目視調査・電気設備竣工図面・定期点検報告書・修繕経歴記録書によって行われます。
報告書では、どの様な電気設備があるか、現況はどの様な状態であるか、改修修繕された部分はどの様な状態であるかを明らかにします。
中長期修繕計画では、部位別に何年後にどの様な修繕または更新を行うかを計画します。ここで重要なのは耐用寿命(更新周期)が何年であるかであります。耐用寿命は一律ではなく、その設置環境・使用条件・メンテナンスの良し悪しなどで大きく変ります。この様なことを判断するには、機器材料の知識は勿論で、施工の知識・設計の能力等が必要になります。


マンション給排水設備

1次調査診断

外観目視調査

【 概要 】:配管、継手、機器等の外表面の腐食状態及び運転状態を目視観察し評価する。
【 特長 】:簡易診断ではあるが、経年状態や仕様等を幅広く考察する事か出来る。

「揚水ポンプ」著しい劣化状態である。

運転・劣化状態の確認

「貯水槽(高置水槽)」

 

「貯水槽底部」

発錆・劣化状態の確認

「PS内配管」 漏水が確認される。

漏水・劣化状態の確認

「ピット内配管」 著しい発錆が確認される。

漏水・劣化状態の確認

「屋外排水桝」 滞留が確認される。

排水機能状態の確認


アンケート調査

【 概要 】:居住者に対し、アンケート表を配布、回収し、各室内における状態や意見をデータ収集する。
【 特長 】:給水での赤水や、排水での詰り等、生活レベルの劣化状態を把握する事が出来る。

「アンケート調査表」「アンケート集計表」


問診調査(ヒアリング)

【 概要 】:居住者とのヒアリングで、現状態の把握や修繕履歴等を確認する。
【 特長 】:意見交換において、修繕計画の素案となる事が多い。


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2・3次調査診断 「非破壊計測調査」1

内視鏡計測調査

【 概要 】:配管内部に装置の先端部(内視鏡)を挿入して、直管部や継手の内部状態を観察調査する。
【 特長 】:断水を要するが、管内の発錆や閉塞状態を幅広く考察する事が出来る。

「給水用内視鏡機器」 5mm

 

 

「調査状況」

洗面器給水口より内視鏡の挿入

 

「管内劣化状況の撮影」

発錆による閉塞状態を確認

「排水用内視鏡機器」 11mm

 

 

「調査状況」

洗面器給水口より内視鏡の挿入

 

「管内劣化状況の撮影」

管内の発錆状況を確認


TVカメラ撮影調査

【 概要 】:大口径配管内にカメラを挿入し、内面状況を調査撮影する
【 特長 】:屋外排水施設の調査の主で、排水流や劣化状況等をTV撮影し確認する事が出来る。

「屋外埋設排水管の調査」

 

「管内劣化状況の撮影」:1

 

「管内劣化状況の撮影」:2

「屋内排水竪管の調査」

 

「管内劣化状況の撮影」:3

 

「管内劣化状況の撮影」:4


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2・3次調査診断 「非破壊計測調査」2

超音波厚さ計測調査

【 概要 】:小型超音波肉厚測定機を配管外部に装着し、管の減肉を測定する。
【 特長 】:断水は不要であるが、測定箇所が限定される事や配管保温の撤去及び復旧を要する。

「測定機器」

測定機器

比較的、太管や埋設管等の調査時に用いられる。


X線装置計測調査

【 概要 】:X線を透過し、管内面の減肉状況を確認する。
【 特長 】:超音波厚さ計測調査が実施出来ない場所や、不断水を要する場合に採用する事が多い。

 

 

「X線発生器」

 

「コントローラ」

「PS内給水管の調査」

 

「配管分岐部撮影」

 

「同左 接写撮影」


計測調査

「水圧測定、水質分析、勾配測定、風温風速騒音測定、絶縁測定、照度測定 等」
【 概要 】:各種計器類による測定を実施し、適正であるかを確認する。
【 特長 】:測定された数値により、目に観えない機能の劣化状態が確認できる。

「水圧計による給水圧測定」
水圧計による給水圧測定

「風速計による換気能力の測定」
風速計による換気能力の測定

「ポンプ電源の絶縁測定」
ポンプ電源の絶縁測定


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2・3次調査診断「破壊計測調査」

配管サンプリング調査

【 概要 】:必要な箇所を配管切断してサンプルを採取し、管内面の状態を調査測定する。
【 特長 】:サンプルを実際に直視する事が出来るので、診断依頼者が最も確実に劣化状況を理解しやすい。

「PS内給水管の調査」

 

「分岐部管の半割状態」

 

「同左管の酸洗い状態」

 

 

「量水器廻り管の半割状態」

 

「同左管の酸洗い状態」


調査診断報告書


耐用年数一覧


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マンション電気設備

受変電設備

設備概要

電力会社との契約電力が共用部分の電灯用と動力用を合せて60KW以上の場合、受変電設備が必要になります。
鋼板製のキャビネットに収められているキュービクル型とフレームパイプで組みたてる開放型があります。電力会社より高圧6kvで受電し、変圧器により電灯用に1相3線式200V/100V・動力用に3相3線式200Vに降圧する設備です。消火栓ポンプなど消防設備の非常電源設備となっているものがあります、これは消防法で非常電源専用受電設備の条件があり、簡単には改造出来ません。

受変電設備


目視調査・更新周期

部位 診断内容 更新周期年数 メンテナンス周期
架空引込 高圧開閉器(G付・G無・LA付) 15〜30年  
電柱(腐食・陥没・傾度) 30〜40年  
装柱金物(腐食・発錆) 30〜40年  
地中引込 高圧キャビネット 40〜60年  
PDS・モールドDS・UGS 15〜30年  
ケーブル ケーブルの種類(CV・CVT・他) 30〜40年  
ヘッドの状態(傾き・固定・発錆) 30〜40年  
プルボックス 状態(水抜き・水漏れ・腐食) 40〜60年  
断路器 変色・変形 15〜30年  
主遮断装置 油入・真空・ガス・汚損・損傷 15〜30年  
変圧器 油漏れ・汚損・異音・温度・振動 20〜40年 オイル交換10〜15年
コンデンサー 油漏れ・汚損・異音・温度・振動 20〜40年 オイル交換10〜15年
リアクトル 油漏れ・汚損・異音・温度・振動 20〜40年 オイル交換10〜15年
PT・CT 汚損・異音 20〜40年  
避雷器 固定・接地 20〜40年  
開閉器 汚損・ひび割れ 15〜40年  
計器類 計器類及び表示灯の異常 20〜40年  
高圧配線 母線・碍子・支持・たるみ・破損 20〜40年  
低圧配電盤 外部点検(発錆・行先・施錠) 15〜30年  
開閉器(過熱・行先・共バサミ・変色・保護) 15〜30年  
キュービクル 扉(ガタツキ・開閉困難・隙間) 40〜60年  
基礎(ボルトの固定・隙間) 40〜60年  
点検窓(ガラスの破損・計器の判読) 40〜60年  
本体(発錆・隙間・施錠) 40〜60年  
換気扇(換気状態・スイッチ・異音) 15〜30年  

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幹線動力設備

設備概要

小規模なマンション(50KW未満)では低圧でそのまま引込まれます。50KW以上になると電力会社の借室電気室が必要になります。15年前頃から地上用変圧器(パットマント)開発され電灯250KVA・動力50KVAまでのマンションは借室電気室が必要なくなりました。
引込開閉器盤から各住戸への幹線は各住戸のシャフト立ち上げる文岐型と各階で横引込配線する横接続型幹線があります。各住戸で使用出来る電気容量は次の表の様に変遷しています。

幹線動力設備

幹線動力設備


目視調査・更新周期

部位 診断内容 更新周期年数 メンテナンス周期
盤類 引込開閉器盤 25〜35年  
動力制御盤 25〜35年 部品交換
警報盤 25〜35年  
共用電灯分電盤 25〜35年  
電路 ケーブルの種類(CV・CVT・他) 30〜40年  
配管(発錆・破損) 40〜60年  
支持材(発錆・破損) 40〜60年  
ボックス(発錆・破損) 40〜60年  
ダクト(発錆・破損) 40〜60年  
ケーブルラック(発錆・破損) 40〜60年  
ハンドホール(冠水・破損) 40〜60年  
シャフト 防火区画貫通処理 40〜60年  
ガスと電気共用シャフト(換気口) -  

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電灯コンセント設備

設備概要

共用部の照明は、エントランスホール・内廊下・開放廊下・内階段・外階段などに分けられます。開放廊下・外階段にある照明器具は一般型の照明器具(逆富士型など)ではでは10年ぐらいで発錆します。最近のマンションではガラスグローブ付防水型の器具が使われる事が多くなっています。
外灯(ポールライト・ポーチライト)も器具の良し悪しで、その耐用寿命は大きく違ってきます。
非常照明(建築基準法)・非難口誘導灯(消防法)はバッテリー内臓型が一般的で定期点検検査が義務づけられています。
廊下・ホール等にあるコンセントは床清掃時に水がかかり絶縁が悪くなっているものが時々あります。(定期点検報告書による)

電灯コンセント設備


目視調査・更新周期

部位 診断内容 更新周期年数 メンテナンス周期
共用照明器具 開放廊下(ちらつき・汚れ・発錆) 8〜25年  
内廊下(ちらつき・汚れ・発錆) 15〜30年  
エントランスホール 15〜30年  
屋内階段 15〜30年  
屋外階段 8〜25年  
外灯 ポーチライト(結露・発錆・破損) 8〜25年  
ポールライト(汚れ・発錆・破損) 8〜25年 塗装6〜8年
コンセント 破損 20〜40年  
非常照明 非常照明(バッテリーテック・発錆・破損) 8〜25年 バッテリー更新 5〜10年
誘導灯(バッテリーテック・発錆・破損) 8〜25年 バッテリー更新 5〜10年

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電話設備

設備概要

電電公社が民営化するまでは、電話機及び配線を一般会社が施工することは出来ませんでした。よって端子盤を設け、空配管を施工するのが当時のマンション側の工事でした。よって電話機及び配線は電電公社から借用していた訳です。
現在はマンション側で設備すれば電話会社に借用料を払う必要がありません。
引き込み配管は予備配管が必ずあり、これを使って光ケーブルを引込でいるマンションがあります。各住戸内まで光ケーブルを配線するのは非常に困難であり、ほとんどマンションでは主端子盤でメタルに変換しています。インターネットは、ADSLで、それほど問題になっていません。

電話設備


目視調査・更新周期

部位 診断内容 更新周期年数 メンテナンス周期
端子盤 MDF(回線数 P・発錆・破損) 30〜50年  
IDF(発錆・破損) 30〜50年  
配線 配管(発錆・破損) 30〜50年  
ケーブル(整線) 30〜40年  

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テレビ共聴設備

設備概要

屋上にアンテナを設け、増幅器・分配器、機器類により各住戸のテレビ端子にテレビ電波を伝送する設備です。
テレビ放送の変遷に伴いテレビ共聴設備もこれに対応し変遷しています。BS放送・ハイビジョン放送に対応するためにテレビ共聴設備機器及びケーブルの性能アップがはかられたのです。
2004年12月に地上デジタル放送が開始されました。2011年にはアナログ放送は停波し、全てのテレビ放送はデジタル放送になります。ITの主流はテレビになるかもしれません。

電話設備


目視調査・更新周期

部位 診断内容 更新周期年数 メンテナンス周期
アンテナ VHFアンテナ(素子破損・マスト発錆) 15〜30年  
UHFアンテナ(素子破損・マスト発錆) 15〜30年  
BSアンテナ(汚れ・マスト発錆) 15〜30年  
機器 ブースター(機能・劣化) 8〜20年  
分岐器・分配器(機能・劣化) 8〜25年  
分配器函 発錆・破損 30〜50年  
配線 配管(発錆・破損) 30〜50年  
ケーブル(5C-2V・5C-FB・S-5C-FB) 15〜30年  
方式(直列送り・直列戸別・戸別双方向) -  

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セキュリティーインターホン設備

設備概要

インターホンはドアーホンから始まり、熱感知器と非常用押しボタンによる警報と機能が増してきています。そして現在はモニターテレビ付、自動火災報知機能を持ったセキュリティーインターホンとなっています。あまりにも早い進歩は、耐用寿命による更新を非常に難しくしています。同じ製品が廃止になったり、機能が増した分配線が不足したりで、更新費用が大変高額になってしまいます。

セキュリティーインターホン設備


目視調査・更新周期

部位 診断内容 更新周期年数 メンテナンス周期
集合インターホン 集合玄関(機能・破損・腐食) 15〜30年  
管理室親機(機能・破損・腐食) 15〜30年  
非常開錠スイッチ 5〜30年  
制御装置 5〜30年  
配線 5〜30年  

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自動火災報知設備

設備概要

延床面積500m²のマンションには消防法で自動火災報知設備が必要になります。管理人室に受信機を設け、各住戸・屋内階段・10m以上の屋内廊下に感知器を設置します。発報時には消火栓ポンプを自動起動させます。
共同住宅の特例基準があります。これは「一定の要件を満たすものについては、令32条を適用し、特例を認める」と言うものです。マンションの診断には、この特例基準の変遷を知る必要があります。

  • 昭和50年 5月 1日 : 49号通知
  • 昭和61年12月 5日 : 170号通知
  • 平成 7年10月 5日 : 220号通知

セキュリティーインターホン設備


目視調査・更新周期

部 位 診断内容 更新周期年数 メンテナンス周期
受信機(複合盤) 定期点検報告書 15〜30年  
メーカー・型式 -  
バッテリーチェック -  
機器収納函 埋込型(発錆) 30〜50年  
露出型(発錆) 30〜50年  
消火栓内臓型 30〜50年  
感知器 損傷・破損 15〜30年 点検不良箇所更新
配線 整線・損傷 15〜30年  

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避雷針設備

設備概要

建築基準法で20m以上の建築物には避雷針設備を設けるようになっています。
昭和30年代の避雷針設備は電気工事会社がガス管を加工してマストとして施工していました。突針と導線の接続が不備で事故が起きたこともあります。現在は建築確認申請時に「支持管強度計算書」を提出するほど厳しくなっています。

避雷針設備


目視調査・更新周期

部 位 診断内容 更新周期年数 メンテナンス周期
突針(マスト) 壁掛・自立(発錆・アンカーボルト) 15〜40年 マスト塗装4〜10年
導線 保護管・支持金具(破損) 15〜40年  
接続端子盤 埋込型・露出型(発錆・破損) 15〜40年  
試験端子盤 埋込型・露出型(発錆・破損) 15〜40年  

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